Urban Innovation KOBE (通称:UIK) 2018年度上期で神戸市 東灘区 総務部 総務課と協働実証実験「行政窓口をスムーズに案内できるツール(区役所UX/UI改善実験)」をしている (2018年10月現在)、「ACALL株式会社」 の藤原弘行CTO、牧田なつみさんにお話を伺いました。
—UIKに応募した理由は何ですか。また、期待する部分は?
藤原
会社としての課題である知名度向上に取り組み、実績を積み上げられると考えている。また、5月に会社を芦屋市から神戸市へ移した際に、神戸市に大きな支援を頂いていたので、神戸に何らかの貢献をしたいという想いも強かった。
—採択されて約3カ月。実際活動してどうでしたか。
藤原
社内でプロジェクトチームを立ち上げて取り組んだ。あっという間の3ヶ月間だった。
業務としては、当初想定していたよりもボリュームは大きくなっている。技術的な挑戦もあった。しかし、長い目で見て、このチャンレンジは将来に向け大きく役に立つものだったと感じている。
また、弊社が提供するサービスとは視点が違ったことも大きな気付きを生み、学びとなっている。というのも今回の東灘区の実証実験では、今まで弊社が開発してきたビジネスパーソンを対象とした民間オフィス向け来客対応システム「ACALL 」とは違い、区役所を訪れる市民の目線でプロダクトを作る必要があり、インターフェースや見せ方が異なっている。
たとえば、ITリテラシーがなくても直感的に触れるようにカスタマイズする必要があった。これからの実証実験で取得したデータから、我々がどれだけ柔軟にできるかが一つのポイントだと考えている。さらに、今回のプロジェクトのためだけでなく、誰もが使いやすいプロダクトにしていきたい。
東灘区役所版ACALLの検索画面(左)と案内画面(右)
—行政との取り組みは初めてですね。
藤原
神戸市の東灘区役所の職員の方や、移転の際にお世話になった企業立地課の職員の方は頭が柔かく、親身になってくれている。
何よりITを使ってより良い社会を作っていこうとの意気込みが強く感じられた。
また、プロジェクトの中では、東灘区役所だけでなく、神戸市の他の区役所の方と意見交換をする機会もあり、多様な意見を頂くことができた。現在開発している受付システムへの応用など、新たなアイデアにも繋がりそうだと感じている。
牧田
私自身、子育てをしており、区役所に行き、色んな窓口を訪れることがある。自分の課題と繋がる部分を感じ、ユーザー目線で取り組めている。
—担当課の東灘区役所に加え、運営事務局となる企業立地課、コミュニティリンクでチームを組んでいる。
藤原
運営事務局からは、プロジェクトのスケジューリングや現場の困りごとについて具体的な提案を頂いた。開発に関しても、期間を考慮しながらどこまで作り、何を機能から外すのかといった開発のスコープなどをチームで検討できたため、技術面の壁もあまりなかった。スムーズで、一体感のあるプロジェクトとして取り組めている。
牧田
プロジェクトが進むと、KPIの設定や開発内容が漠然としたり、やりたいことが広がったりすることがあるが、事務局サイドから期間がこれくらいだから、これくらいのKPIが良いのでは、などと適切な交通整理をして頂いた。動きやすく、区役所職員の方も私たちも納得して、目線を同じくして進められた。
—UIKと他のアクセラレーションプログラムの違いについてどう感じていますか。
藤原
これまで大阪市などのアクセラレーションプログラムに参加してきた。
UIKは、現場の困りごとに取り組む課題解決型プロジェクト。現場で困っている人たちの声を聞いて、自分たちのリソースで何ができるかを考える点が異なる。メンタリングを受けるプログラムはあるが、実際に課題解決に取り組むことができることは大きなチャンスだと感じている。
―UIKでは、参加企業の他都市展開も目指している。
藤原
UIKへの参加が一つの実績となっており、他都市へ横展開し、プロダクトを広げるきっかけにもなる。
東京のある展示会では、すでに他の自治体の方から相談を受ける機会もあり、実質的に他都市への橋渡しをして頂いている。神戸発のスタートアップとして、成果発表会での知名度向上、プロダクト露出にも期待している。
―会社は、神戸へのこだわりが強いですね。
藤原
代表も私も大学時代を神戸で過ごした。今も神戸に住んでおり、神戸への愛着がある。スタートアップにとって、一般的な選択肢は東京や大阪であることが多いが、そうではない選択肢として、神戸から発信していきたかった。神戸は街並みが綺麗で住みやすく、気持ち良く仕事ができるメリットがある。
一方で、東京は、満員電車に乗るのは嫌だ、などという声をよく聞く。我々が成功モデルとして名前が知られ、少しでも企業やエンジニアなどが神戸に集まりやすくなるようにしたいと考えている。そのために、まずは自分たちが頑張りたい。
日本だけではなく、世界へプロダクトを発信していきたい。そうなれば東京にこだわる意味も薄れると考えている。
UIKでも、多くの神戸の企業に参加してもらいたい。住んでいる街を良くしようという想いは、大きなモチベーションにもなる。そこに東京や大阪の企業も入ることでお互いに刺激し合い、高めていくことができるのではないか。
―UIKに参加を目指す企業にメッセージを
藤原
スタートアップにとっては、行政と協働で取り組めるまたと無いチャンス。長期の視点に立って、今後のビジネス展開にうまく組み込むと良いのではないか。
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